相続税贈与税改正のポイント(生前贈与加算)
アクセス4月号に掲載したとおり、「令和5年度税制改正」で暦年贈与において、贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を相続開始前3年間から7年間に延長し、延長した4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算しないこととされましたが、経過措置があり実際に7年間の加算対象となるのは令和13年1月以降の相続開始からになります。
【ポイント】
相続開始が令和9年から令和12年末までについては贈与加算の年数が変動します
相続開始日を毎年の9月10日とした場合の贈与財産の加算対象期間と加算期間 | ||
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相続開始日 | 加算対象期間 | 加算期間 |
令和6年9月10日 | 令和3年9月10日~令和6年9月10日 | 3年間 |
令和7年9月10日 | 令和4年9月10日~令和7年9月10日 | 3年間 |
令和8年9月10日 | 令和5年9月10日~令和8年9月10日 | 3年間 |
令和9年9月10日 | 令和6年1月1日~令和9年9月10日 | 3年+9カ月10日 |
令和10年9月10日 | 令和6年1月1日~令和10年9月10日 | 4年+9カ月10日 |
令和11年9月10日 | 令和6年1月1日~令和11年9月10日 | 5年+9カ月10日 |
令和12年9月10日 | 令和6年1月1日~令和12年9月10日 | 6年+9カ月10日 |
令和13年9月10日 | 令和6年9月10日~令和13年9月10日 | 7年間 |
「令和6年1月1日~」:改正法は令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産に適用される
【ポイント】暦年贈与の加算対象者は現行と変更はありません
現行の加算対象者は、「相続又は遺贈により財産を取得した者」とされており、改正後も変更は ありません。したがって、孫など本来は相続人でない者が受けた贈与については、相続財産に加算 しなくていいことになっています。ただし、本来相続人でない者でも生命保険金のみなし相続財産 を取得した場合や遺言により財産を取得した場合には加算されることになるので注意が必要です。
副業・兼業に対する会社の対応
近年、働き方改革などの影響により、副業・兼業を行う人の割合が増加しています。副業・兼業(以下「副業」)とは、収入や知識、経験を得るために行う本業以外の仕事のことを指し、ダブルワークとも呼ばれます。
この機会に、副業に対する会社側の対応を簡単に確認しておきましょう。
●副業を禁止できるケース
労働者には、労働時間以外の時間を自由に過ごすことができるという「私生活の自由」が保障されているため、原則として、会社は従業員の副業を禁止することができません。
ただし、以下のような場合には会社が副業を制限することも許されています。
- ①労務提供上の支障があるとき
副業が忙しく、疲れて本業に集中できなくなるなど労務の提供に影響がある場合は、副業を禁止することができます。 - ②業務上の秘密が漏洩するとき
労働者には業務上の秘密を守る義務があるため、会社のノウハウや機密情報が漏洩してしまう等の場合には副業を禁止することができます。 - ③競業により自社の利益が害されるとき
労働者は、競業避止義務(在職中に使用者と競業する業務を行わない義務)を負うため、副業によって使用者の利益を侵害する場合は、副業を禁止することができます。 - ④自社の名誉や信用を損なう行為や労使の信頼関係を失う行為があるとき
労働者には、使用者の名誉・信用を毀損しないよう誠実に行動する義務があるため、副業が公序良俗に反する場合などは副業を禁止できます。
●副業に関するルール設定
以上で見てきたように、会社側は従業員の副業を無条件で禁止することはできません。
そのため、副業に関するルールとしては「許可制」とすることをおすすめします。副業を希望する従業員に対し以下事項の聞き取りを行い、副業を許可するかどうか決定するとよいでしょう。
- 副業の事業内容(競業ではないか)
- 副業の業務内容(機密情報が漏洩しないか)
- 副業をする場所・曜日・時間(本業に支障が出るほどの長時間労働にならないか、休日が確保できるか)
●副業先での労働時間・割増賃金について
従業員が副業先で労働者として雇用される場合は、「本業と副業の労働時間が通算される」ということに注意が必要です。例えば、本業で8時間働いた後に副業先で3時間働いた場合、1日の法定労働時間(8時間)を超えた3時間分については割増賃金が発生することとなります。
ここで時間外労働の割増賃金を支払う義務を負うのは、後から労働契約を締結した事業所となります。働く時間の前後とは関係がありませんのでご留意ください。