労働基準法の一部改正が1年8ヶ月を要してついに成立
法改正に伴った戦略的対応
仕事と生活のバランスを図るための「働き方の見直し」の観点から、労働時間制度について整備を行うことが必要と平成18年より審議を重ねてきた長時間労働を抑制するための法案がついに成立しました。
そこで、企業の実務対応ついて検討し、会社側として対処すべき点を考察します。
近年、過重労働という言葉をよく耳にするようになりました。
現状として、時間外労働を80時間以上した場合に過重労働と定められており、従業員の健康を損ねる恐れや仕事と生活の両立ができなくなるということで、避けるように言われています。
この長時間労働を抑制し、従業員の健康確保や仕事と生活の調和を図ることを目的とした「労働基準法の一部を改正する法律」が平成20年12月12日に公布され、平成22年4月1日から施行されます。
1ヶ月に60時間を越える時間外労働を行う場合は、割増賃金率が50%になります。
当初の法案では、「80時間」を越える時間外労働を行った場合、割増賃金率が50%となると言われておりましたが、これを「60時間」に引き下げて施行されることとなりました。
これは、前文で述べた過重労働の基準を「80時間」から「60時間」に下げ、現状よりもっと長時間労働を抑制するためだと判断されます。
- 注1)
- 割増賃金の引上げは、時間外労働が対象です。休日労働(35%)と深夜労働(25%)の割増賃金率は変更ありません。
- 注2)
- 中小企業の割増賃金率については、施行から3年経過後に改めて検討することとされています。猶予される中小企業はつぎのAまたはBに該当する企業です。
A 資本金の額または出資の総額
- 小売業
- 5千万円以下
- サービス業
- 5千万円以下
- 卸売業
- 1億円以下
- 上記以外
- 3億円以下
B 常時使用する労働者
- 小売業
- 50人以下
- サービス業
- 100人以下
- 卸売業
- 100人以下
- 上記以外
- 300人以下
※上記A及びBについては、事業場単位ではなく、企業(法人または個人事業主)単位で判断されます。
割増賃金の支払いに代えた有給休暇の仕組みが導入されます。
会社と労働者との間で労使協定を締結すれば、1ヶ月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、改正法による引上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払いに代えて、有給休暇を付与することができます。
時間外労働は原則として、1ヶ月に45時間を限度となっておりますが、それを超えて時間外労働を行う場合には、あらかじめ労使で特別条項付の時間外労働の協定を結ぶこととなっております。その特別条項付の時間外労働の協定を結ぶ場合に下記の制度が制定されました。
- 特別条項付の時間外労働に関する協定には、月45時間を超える時間外労働に対する割増賃金率も定めること
- ①の率は、法定割増賃金率(25%)を超える率とするように努めること
- 月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めること
現行の制度では、有給休暇は1日もしくは半日単位で取得することとなっていますが、労使で協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになります。
平成21年度税制改正について
日本経済は、国内での構造改革の取り組みや国際面での輸出の進展もあり、昨年秋口までは比較的息の長い景気回復を続けてきたが、アメリカ金融市場の混乱の影響を受け、景気は後退局面に入っていると言わざるを得ない状況の中で、平成21年度の税制改正の概要が発表された。
個人所得においては、税負担格差の是正や所得再配分機能の回復の観点から、各種控除や税率の見直し。法人課税においても国際間競争の強化などの観点から法人実効税率の引き下げの検討が行われた。
主な改正内容の一部は次のとおりである。
いずれの場合も、詳細な要件があるので適用を受ける場合は、専門家に相談して下さい。
住宅・土地税制
(1)住宅ローン控除(一般住宅の場合)
居住年 | 控除期間 | 対象借入額 | 控除率 | 最高控除額 (年間) |
最高控除額 (累計) |
---|---|---|---|---|---|
平成21年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.0% | 50万円 | 500万円 |
平成22年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.0% | 50万円 | 500万円 |
平成23年 | 10年間 | 4,000万円 | 1.0% | 40万円 | 400万円 |
平成24年 | 10年間 | 3,000万円 | 1.0% | 30万円 | 300万円 |
平成25年 | 10年間 | 2,000万円 | 1.0% | 20万円 | 200万円 |
(2)特別税額控除の創設
- ①一定の省エネ改修工事を行った場合
- ②一定のバリアフリー改修工事を行った場合
- ※改修工事費用等の10%を所得税から控除
- ※この場合、自己資金で改修を行った場合も対象になる。
中小企業対策
(1)中小企業に対する軽減税率の時限的引き下げ
- ①中小法人等の年800万円以下の所得に対する法人税率を18%に引き下げる。
(現行22%) - ②平成21年4月1日から平成23年3月31日までに終了する事業年度に適用する。
(2)中小企業に対する欠損金繰戻しの還付の復活
相続税制
(1)取引相場のない株式等にかかる相続税の納税猶予制度の創設
(平成20年10月1日以後の相続に対して遡及施行)
(2)取引相場のない株式等にかかる贈与税の納税猶予制度の創設
(平成21年4月1日以後の贈与から適用)
金融・証券税制
(1)生命保険控除の改組
生命保険控除を以下の3つに区分する。
- ①一般の生命保険料控除
- ②個人年金保険料控除
- ③介護医療保険料控除(新設)
- ※各保険料控除額は、4万円とする。
- ※平成24年分以降の所得税から適用