介護職員等特定処遇改善加算のポイント
2019年10月に「介護職員等特定処遇改善加算」が創設されました。
新しい処遇改善加算は、配分ルールを理解した上で取り組む必要があります。
下図のように3グループのうちAグループだけに支払う場合は、簡単ですが、AグループとBグループ又は全てのグループに支払う場合は、配分割合等のルールがあります。
- 賃金改善後の賃金が年額440万円を上回る場合は対象外
※440万円の基準にあたり
・手当等を含めて判断
・非常勤職員の場合は、常勤換算方法で計算して判断 - 平均賃金額について、CがBより低い場合、平均賃上げ額を、基本の1:0.5ではなくBと同等の水準(1:1)とすることが可能
出典:厚生労働省老健局保険課「2019年度介護報酬改定について~介護人事のさらなる処遇改善~」
留意点:平均賃上げ額の計算
- 原則、常勤換算方法による人数算出が必要
一方、その他の職種については、実人数による算出も可能であり、事業所内で検討し、設定することが重要 - 全ての職員をA、B、Cのいずれかに区分するため、賃金改善を行わない職員についても職員の範囲に含めることとなる
Aグループでそれなりの金額を出さないとBグループに払える金額が出てきません。Bグループにそれなりの金額が払えないとCグループで払える金額は、ますます少額になるという仕組みになっています。
その上、受けとった金額を上回る賃金改善をしなければなりません。
次のシュミレーションで実際のグループごとの金額のバランスが確認できます。思っていた以上にB,Cグループの金額が少ないです。こういったことを踏まえてAグループの条件設定やグループ分け、支払い対象グループの選択を検討する必要があります。
デイサービス・シミュレーション 区分Ⅱ
経験・技能のある 介護職員 |
その他の介護職員 | その他の職種 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
生活相談員 | 900 | 900 | ||
看護職員 | 900 | 900 | ||
機能訓練指導員 | 900 | 900 | ||
介護職員A | 80,000 | 80,000 | ||
介護職員B | 1,900 | 1,900 | ||
介護職員C | 1,800 | 1,800 | ||
介護職員D | 1,800 | 1,800 | ||
介護職員E | 1,800 | 1,800 | ||
計 | 81,900 | 5,400 | 2,700 | 90,000 |
人数(人) | 2 | 3 | 3 | 7 |
平均 | 40,950 | 1,800 | 900 | |
前提となる加算算定額 @9,000×40人×25日=9,000,000円 加算 9,000,000×1%=90,000 |
(単位:円)
真の「介護離職ゼロ」が急務
「2025年問題」ご存知でしょうか。この年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年です。これまで急速な高齢化が問題と言われてきましたが、2025年以降は、全人口の4人に1人である2200万人が75歳以上という超高齢社会となります。
日本が抱える問題として「介護離職ゼロ」がテーマとされ「介護を理由に仕事を辞めない社会の実現」が掲げられていますが、介護を必要とする人は年々増加し、働きながら家族の介護を行う労働者も増えています。
労働者が介護離職を決断するのはどんなときか
- 要介護者の心身状況等の変化があるとき
- 入退院時、医療ニーズが高くなった時、独居が困難になった時、状況悪化により介護負担が増大した時、末期がんになった時など
- 介護者の心身状況・環境等に問題があるとき
- 介護者の体調不良やストレス増大時、別居から同居する時、ダブル介護になった時、経済的問題が発生した時、会社や働き方の環境が変化した時など
上記のことから介護負担が増大することが「離職」への大きなきっかけとなることがわかります。
介護離職をした人には、自分が家族介護をしていることについて勤め先に何も言わずに「自主退職」する人が少なくありません。労働者が離職を決意してしまった後では慰留も難しくなりますので、家族介護をする労働者がどのようなときに離職を決意するのかを知っておき、対応策を講じておくことが必要です。
本心では「仕事を続けたい」労働者が多い
- 未介護者の72%は、介護がはじまったら「仕事を続けられない・わからない」と感じている
- 未介護者の73%が、介護がはじまったとき「出来るだけ通常通り働きたい」と感じている
出所:㈱リクシス「ビジネスパーソン2500人を対象とした仕事と介護の両立に関する分析レポート」
「介護が始まっても働き続けたい」と、労働者は願っています。しかし、そうは思っていても実際に介護が始まったら「仕事を続けられない」と思っています。
労働者の「働き続けたい」という思いを支援する仕組みの構築が、企業と労働者を救うことになります。