- 日本経済は、国内での構造改革の取り組みや国際面での輸出の進展もあり、昨年秋口までは比較的息の長い景気回復を続けてきましたが、アメリカ金融市場の混乱の影響を受け、景気は後退局面に入っていると言わざるを得ない状況の中で、平成21年度の改正税制がスタートしました。主な改正内容は次のとおりです。
- 個人所得においては、税負担格差の是正や所得再配分機能の回復の観点から、各種控除や税率の見直し、法人課税においても国際間競争の強化などの観点から法人実効税率の引き下げの検討が行われています。
相続・贈与では、中小企業の事業承継が円滑に進むよう、新たな制度が創設されました。また、貯蓄から投資への流れを促進するための措置も盛り込まれています。
主な改正内容の一部は次のとおりです。
いずれの場合も、詳細な要件があるので適用を受ける場合は、専門家に相談して下さい。
- 中小企業に対する軽減税率の時限的引き下げ。
- 中小法人等の年800万円以下の所得金額に対する法人税の軽減税率が22%から18%に引き下げられます。平成21年4月1日から平成23年3月31日までに終了する事業年度に適用。
- 欠損金繰り戻し還付の復活
- 平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額について、欠損金の繰り戻しによる還付制度が適用出来るようになります。
- 役員給与の事前届出の記載の簡略化
- 事前確定届出給与の届出について、その役員の前期の給与及び他の役員の給与の記載について簡素化が図られます。
- 住宅ローン減税
- 住宅の取得をし、平成21年から平成25年までの間に居住した場合の控除期間、年末残高の借入限度額及び控除率は次のとおりです。
居住年 控除期間 対象借入限度額 控除率 年間控除限度 平成21年 10年間 5,000万円 1.0% 50万円 平成22年 10年間 5,000万円 1.0% 50万円 平成23年 10年間 4,000万円 1.0% 40万円 平成24年 10年間 3,000万円 1.0% 30万円 平成25年 10年間 2,000万円 1.0% 20万円 - 「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に規定する認定優良住宅の場合は、一定の条件を満たせば控除率がアップします。その場合の控除率は次のとおりです。
居住年 控除期間 対象借入限度額 控除率 年間控除限度 平成21年 10年間 5,000万円 1.2% 60万円 平成22年 10年間 5,000万円 1.2% 60万円 平成23年 10年間 5,000万円 1.2% 60万円 平成24年 10年間 4,000万円 1.0% 40万円 平成25年 10年間 3,000万円 1.0% 30万円 - 特別税額控除の創設
居住する家屋について、一定の改修工事を行った場合、特別控除の適用を受けることが出来ます。
(1)一定の省エネ改修工事を行った場合(工事費用30万円を超える等要件あり)
(2)一定のバリアフリー改修工事を行った場合(工事費用30万円を超える等要件あり)
※改修工事費用等の10%を所得税から控除(20万円または30万円を限度)
※自己資金で改修を行った場合も対象になります。
- 住宅の取得をし、平成21年から平成25年までの間に居住した場合の控除期間、年末残高の借入限度額及び控除率は次のとおりです。
- 取得した土地等の長期譲渡所得からの特別控除の創設
- 平成21年及び22年中に取得した土地等の長期譲渡所得に対する1,000万円特別控除制度の創設(個人だけでなく法人も対象)
●購入時期 ・・ 平成21年1月1日から平成22年12月31日
●所有期間 ・・ 譲渡した年の1月1日において5年を超えるもの
以上の条件で土地を譲渡した場合、譲渡益より1,000万円を限度とした特別控除ができます。 - 平成21年及び22年中に取得した土地等の先行取得をした場合の課税の特例の創設
(事業者のみ対象)
(1)平成21年1月1日から平成22年12月31日の間に土地を取得した事業者が
(2)購入した事業年度以降10年以内に
(3)以前より所有している土地など(棚卸資産に計上されているものは除く)を売却
以上の条件を満たし、事前に届出をなされていることを要件として、譲渡益の80%相当額を圧縮記帳できます。
- 平成21年及び22年中に取得した土地等の長期譲渡所得に対する1,000万円特別控除制度の創設(個人だけでなく法人も対象)
- 非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度
- 取引相場のない株式等にかかる相続税の納税猶予制度の創設(平成20年10月1日以後の相続に対して遡及施行)として、経営承継人が納付すべき相続税のうち相続などにより取得した議決権株式などに係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予される制度です。
- 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度
- 取引相場のない株式等にかかる贈与税の納税猶予制度の創設(平成21年4月1日以後の贈与から適用)として、一定の後継者が、経済産業大臣の認定を受けた非上場会社を経営してた親族から保有株式等の贈与を受けた場合、一定の条件のもとにおいて贈与税の納税が猶予されます。
- 個人住民税の住宅ローン特別控除
- 平成21年分以降の所得税において住宅借入金特別控除の適用がある人(平成21年から平成25年までに入居した人に限る)で、所得税にて控除しきれない金額がある場合は、翌年度分の個人住民税において、その残額相当額が減額されます。
(限度額9.75万円)市町村への特別の申告は不要となります。
- 不動産取得税の特例を延長
- 不動産取得税の標準税率を本則の4%から3%とする特例措置の適用期限が3年間延長されました。
- 自動車取得税の軽減措置
- 環境への負荷が少ない電気自動車などについて、3年に限り、自動車取得税が免除・軽減されます。