「中小企業における経営の事業の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)は、中小企業者が代表者交代に伴う様々なトラブルによって、経営危機に陥るのを防ぐためにできた新しい法律です。地域経済の下支えをする中小企業の存在を後押しし地域での「雇用」を確保するという目的で作られた法律です。
経営承継円滑化法の構成
- 遺留分に関する民法特例
- 遺経営承継時の金融支援
- 相続税の納税猶予(税制優遇)
中小企業基本法上の定義
業 種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 100人以下 |
資本金か従業員数のどちらかを満たしていればよい。
政令により範囲を拡大した業種
業 種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 |
相続時の問題点
- 相続発生後の事業継続に不可欠な自社株式等が後継者以外へ分散する可能性あり
- 自社株を生前贈与された後継者の貢献による自社株の価値上昇部分が遺留分に加算される可能性
問題の解消方法(特例の創設)
- 贈与株式の価格を遺留分算定基礎財産から除外する。(除外合意)
- 遺留分算定基礎額財産に参入する贈与株式の評価額をあらかじめ固定する。(固定合意)
民法特例を受けるためには
- 経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要
金融支援の必要なケース
- 多額の資金が必要となるケース
- 相続によって分散した自社株などの買い取り
- 自社株や事業用資産に対する、多額の相続税の納税資金の必要性
- 信用力の低下
- 取引先の支払条件が厳しくなる
- 金融機関からの借入情景が厳しくなる
資金需要に対応したメニュー
- 会社、個人事業主への特例支援
- 信用保険の拡大により、自社株式、事業用資産等の買取り資金
- 信用状況が低下している中小企業者の一定期間の運転資金
- 代表者個人への特例支援
- 相続税・遺留分滅殺請求への対応資金
- 自社株式、事業用資産等の買取り資金
相続税の課税対象価額の80%の納税を猶予する制度
被相続人の要件
- 会社の代表者であったこと
- 被相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主であった場合
相続人の要件
- 会社の代表者であること
- 被相続人の親族であること
- 相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主となる場合
事業継続要件(5年間)
- 相続人が代表者であり続けること
- 雇用の8割以上を維持すること
- 相続した対象株式の保有を継続すること
制度利用の認定
- 経済産業大臣の認定が必要
「事業承継円滑化法」の各制度を利用する場合には、様々な要件や手続き等が必要となります。
また、事業承継の状況によっては別の制度を利用した方が有利な場合もあります。
相続トラブルを生前に防ぎたいと考えている事業主の方は、早めの相談をおすすめします。