平成24年10月現在
パート、アルバイト、派遣社員や契約社員など、正社員以外の労働形態に多く見られる有期労働契約で働く人は全国で1,200万人と推計されています。
さらに、この有期労働契約で働く人の3割が通算5年を超えて労働契約を反復更新しているのが実態であり、有期労働契約で働く人々の雇止めの不安、不合理な労働契約を解消し、安心して働き続けることができる社会の実現のため、労働契約法の改正が行われました。
同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年間を超えて反復更新された場合には、有期契約労働者が使用者に対し申込を行うことによって期間の定めのない契約(無期労働契約)へと転換できるルールです。
- 労働者が申込権を行使した場合、有期契約満了日において、無期労働契約が成立しているため、使用者が有期労働契約の満了日をもって雇用契約を終了させることは、無期雇用の解雇に該当することになります。
「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には権利を濫用したものとして無効となります。(解雇権濫用法理) - 無期転換の申込権の発生を回避するために一時的に直接雇用からはずし、請負や派遣の形態を偽装した場合は脱法手段とみなされ、同一の使用者との労働契約が継続しているものとみなされます。
- 無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ有期契約労働者に申込権を放棄させることは公序良俗に違反し無効となります。
- 無期転換後の労働条件は、労働協約、就業規則、個々の労働契約によって別段の定めがない限り、従前と同一の労働条件となります。別段の定めをする場合、職務内容が変わらないのに労働条件を従前より低下させることは望ましくないと通達されています。
- 有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、同一の使用者の下で働いていない空白期間(クーリング期間)が6ヵ月以上あるときは、その空白期間より前の有期契約期間は5年のカウントに含まれません。
使用者が有期労働契約の更新を拒否し、雇用を終了させる「雇止め」については、無期労働契約と実質的に同じ場合や、雇用の継続を労働者に期待させている場合は、合理的な理由が無い限り雇止めできないという以前から確立しているルールです。(雇止め法理)
このルールが法律に明文化されることになりました。
有期契約労働者と無期契約労働者の間で、期間の定めがあることにより、不合理に労働条件を相違させることを禁止するルールです。
不合理と認められるかどうかは、職務の内容、配置転換の範囲など個々の労働条件ごとに判断されます。
新ルールに伴い、無期契約への転換対策のため、使用者が5年未満の労働契約で雇止めをすることにより非正規労働者をさらに活用したり、新規の正社員の採用を抑制し、新卒の就職を更に厳しくするなどの逆効果も考えられます。
現在の雇用環境改善を図るには、使用者は有期契約労働者だけではなく正規雇用労働者も含め、役割、能力、賃金、働き方等について各労働者に適した労働条件を再度見直す必要があるのではないでしょうか。