経営レポート

育児介護休業法が改正されました ~仕事と育児、介護・その両立を支援する会社に~

平成21年7月1日に育児・介護休業法が改正公布されました。
この改正法により、従業員にとっては仕事と育児・介護を両立しやすい環境がさらに整備されたことになります。 施行にあたっての就業規則改正における対応ポイント、受給可能性のある助成金について紹介します。

改正の内容と会社での対応スケジュール

改正法の施行日は、平成22年6月30日となりました。
しかしながら労組同社が常時100人以下である中小企業に対しては影響を考慮し、一部の規定は公布日から3年以内の政令で定める日までに施行されることになっています。

平成22年6月までに対応すべきこと
次の事項については、早速内容を検討し、速やかに改正にとりかかることが必要です。
  改正点 改正の内容
1 子の看護休暇の拡充 小学校就学前の子が1人であれば年5日(現行)、2人以上であれば年10日に拡大する。
2 「パパママ育休プラス」の追記 父母ともに育児休業を取得する場合、子が1歳から1歳2ヶ月に達するまでの間に、それぞれ1年間上限で育休を取得できるようにする。
3 父親の育児休業取得の促進 妻の出産後8週間以内(産後休業期間中)に父親が育児休業を取得した場合、父親については、特例として、特段の理由がなくても再度の育児休業が取得できることとする。
4 労使協定の「専業主婦(夫)除外規定」廃止 労使協定により育児休業の対象外とする制度を廃止し、妻の就労状況にかかわらず、すべての父親が必要に応じ育休を取得できることとする。
公布から3年以内の政令で定める日までに対応
中小企業に対する暫定措置の対象である次の事項については、改正時期、会社への影響に関する十分な検討、従業員への周知に向けた取り組みが必要です。
  改正点 改正の内容
1 育児短時間勤務制度の義務化 3歳までの子を養育する者について、1日6時間の短時間勤務制度を設けることを事業主の義務とする。
2 請求による所定外労働の免除 3歳までの子を養育する者について請求があった場合に、所定外労働を免除することを制度化する。
3 短期介護休暇の制度化 要介護状態にある家族の通院の付き添い等に対応するため、介護のための短期の休暇制度(年5日、対象者が2人以上であれば年10日)を設けること。
実効性の確保
事業主が対応すべき事項ではありませんが、改正内容として、平成21年9月30日より、改正法に基づく紛争解決援助制度が施行されています。これまで妊娠、出産に伴う紛争が調停制度の対象となっている一方で、育児、介護休業等に伴う紛争が対象外とされていた状況を是正するものです。
都道府県労働局長による紛争解決の援助、調停委員による調停制度が新設されたことで問題解決に向けての道筋がつくられました。
また、これまで育児介護休業法には制裁措置がなく、実効性はあくまで関係部署の助言、指導によっていたことを踏まえ、勧告に従わない場合の公表制度や、虚偽の報告をしたもの等に対する20万円以下の過料が設けられ、既に施行、実効性が強化されています。

改正法の背景

前項で説明した改正法の内容は、現在の日本の人口構成をも含む大きな流れに対する政府の姿勢をあらわしているといえます。
日本の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子供の平均数)は、2008年に1.37となりました。上昇しているとはいえ、人口を維持できる水準(2.07)には依然達しておらず、少子化の流れに歯止めはかかっていません。
少子化は生産年齢人口を減少させ、経済成長率を低下させる可能性があります。また、年金等の社会保障の分野において、現役世代の負担増大が見込まれ、将来に憂慮を残すことが大きいといえます。
しかしながら、少子化そのものが問題である一方、「社会の何か」が少子化を引き起こしていることも事実です。少子化を引き起こす理由として、子育てにかかる金銭的負担の増加、未だ育児の負担が女性に多くかかることなどさまざまな原因が考えられます。

~子育ての環境整備へ向けて~

こういった社会の流れの中で、女性に限らず、男性も含めて、働きながら子育てできる環境を一層整備し、少子化への改善策とする方針が、改正法の内容に現れているといえるでしょう。
また、子育てをしなければならない、介護をしなければならない、などといった様々な事情を抱える労働者に対して、等しく働きやすい環境を整備するということは、現政権の掲げる相互尊重、相互理解、相互扶助の友愛三原則にも則っているといえます。

育児休業に関する助成金について

ここまでは改正法そのものについて述べてきましたが、必然的に現在の規定等を見直す今回の機会を利用し、助成金受給の可能性についても検討してみてはいかがでしょうか。

中小企業子育て支援助成金
育児休業取得者または短時間勤務制度の利用者が初めて出た場合に支給されます。
要件
  • 常時雇用する労働者の数が100人以下
  • 一般事業主行動計画を策定、届出していること(計画策定も含みお手伝いいたします。)
  • 就業規則の規定が整備されていること
  • 平成18年4月1日以降初めて育児休業取得者または短時間勤務利用者が出たこと
申請期間
  • 6ヶ月以上の育児休業を取得した者で、復職後6ヶ月を経過した日の翌日から起算して3ヶ月以内
  • 短時間勤務制度の利用開始後、6ヶ月を経過した日の翌日から起算して3ヶ月以内
金額
育児休業
1人目 100万円
2~5人目 80万円
短時間勤務制度
1人目 ①6ヶ月以上1年以下 60万円
②1年超2年以下 80万円
③2年超 100万円
2~5人目 ①6ヶ月以上1年以下 40万円
②1年超2年以下 60万円
③2年超 80万円
両立支援レベルアップ助成金(代替要員確保コース)
育休取得者の代替要員を確保し、育休取得者を原職等に復帰させた時に支給されます。
要件
  • 21世紀財団の定める中小事業主である。
  • 原職復帰規定を就業規則に定めている。
  • 平成12年4月1日以降、3ヶ月以上の育児休業者がおり、その間代替要員を3ヶ月以上確保している。
  • 育休取得者が原職に復帰して6ヶ月以上雇用されている。
期間 原職に復帰し6ヶ月が経過した日の翌日から起算して3ヶ月以内に申請
金額
平成12年4月1日以降 新たに規定した場合
1人目 50万円
(行動計画無い場合は40万円)
2人目以降 15万円
同日以前に規定していた場合
15万円

最後に~会社の使命と責務について~

平成21年10月26日の所信表明演説において、鳩山首相は、「人に評価され、感謝され、必要とされてこそ幸せ」の例に、「日本理化学工業」(川崎市高津区)を取り上げました。この会社は、約50名の従業員中、7割が知的障害をもった方となっています。 社長の「人間にとって、"生きる"とは必要とされ働くこと」との気づきから、「自分の会社が、障害を持つ人たちに生きる場を提供しよう、それが企業の存在価値であり社会的使命ではないか」との考えに至り、そこから積極的に障害を持つ人たちを雇用しつづけているのだということです。
法政大学大学院の坂本光司教授は、同じ「日本理化学工業」を著書で取り上げており、その著書の中で、会社には「5人に対する使命と責任がある」と定義しています。
その5人とは、

  • 社員とその家族を幸せにする。
  • 外注先・下請企業の社員を幸せにする。
  • 顧客を幸せにする。
  • 地域社会を幸せにし、活性化させる。
  • 最後に株主を幸せにする。

ということを表しています。
会社が、この順番で使命と責任を果たす努力を続けることが、継続しつづける会社を生むと述べられているのです。 今回の育介休業法の改正は、子を産み育てる社員とその家族、介護を必要とする家族を持つ社員に対して、より一層の支援をすることが目的です。
この法改正に取り組むことは、「1.社員とその家族を幸せにする」という使命に取り組むことです。
その結果、社員が会社に感謝し、会社を必要とし、誇りをもって働くならば、必然的に会社は継続、成長しつづけることでしょう。 会社の使命、責任はどこにあるのか、会社の方針、方向性は、5人に対する使命と責任を果たすものであるのだろうか、再度考えてみてはいかがでしょうか。

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