平成18年4月から老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢引き上げに伴い、60歳以降の雇用延長(企業の義務)が65歳まで段階的に引き上げされています。
この機会に就業規則の変更、60歳以降の年金との調整を考えた賃金設計、助成金について考えてみませんか?
60歳以降の雇用延長(高齢者雇用)は、以下に述べる4つの方法があります。
- 定年年齢の引き上げ(全社員を無条件に雇用延長)
- 60歳定年退職後の再雇用(再雇用基準の定めが出来る)
- 60歳定年後の継続雇用(継続雇用基準の定めが出来る)
- 定年制の廃止
(注)2と3の相違点
2の再雇用とは、60歳到達によって一旦定年退職させ、その翌日以降に再度雇い入れすることを指します。3の継続雇用とは、60歳到達時に退職させること無く引き続き雇用することを指します。
また2・3を選択し基準を設ける場合には労使協定で基準を明確に定めておくことが必要です。
前述の60歳以降の雇用延長措置を定めて1年以上経過している場合でさらに「65歳以上への定年引上げ」、「定年の定めの廃止」、「希望者全員を対象とする70歳以上までの継続雇用制度の導入」または「65歳前に契約期間が切れない契約形態による希望者全員を対象とする65歳以上までの継続雇用制度(65歳安定継続制度)」を導入した中小企業事業主に対し、導入した制度に応じて一定額が支給されます。
60歳以降の賃金を決めるにあたり知っておくべきポイントは3つあります。これらをうまく活用することにより企業の人件費は削減されスムーズに65歳まで継続雇用が可能となります。
- ①60歳以降賃金が低下した場合、雇用保険から補填あり
- 60歳以降の賃金が、60歳到達時の賃金の75%未満に低下した場合、雇用保険から「高年齢雇用継続給付」が支給されます。支給額は最大で、賃金額が61%以下に低下した場合支給対象月の賃金額の15%が支給されます。
- ②生年月日と性別による老齢厚生年金支給時期の違い
- 老齢厚生年金は、60歳から報酬比例部分が支給されますが、性別と生年月日によって、残りの定額部分が加算されて満額支給となる時期が異なります。
生年月日 受けられる年金 60 61 62 63 64 65歳 - 男 S16.4.1以前
- 女 S21.4.1以前
報酬比例部分 老齢厚生年金 定額部分 老齢厚生年金 - 男 S16.4.2~S18.4.1
- 女 S21.4.2~S23.4.1
報 老齢厚生年金 定 老齢厚生年金 - 男 S18.4.2~S20.4.1
- 女 S23.4.2~S25.4.1
報 老齢厚生年金 定 老齢厚生年金 - 男 S20.4.2~S22.4.1
- 女 S25.4.2~S27.4.1
報 老齢厚生年金 定 老齢厚生年金 - 男 S22.4.2~S24.4.1
- 女 S27.4.2~S29.4.1
報 老齢厚生年金 定 老齢厚生年金 - 男 S24.4.2~S28.4.1
- 女 S29.4.2~S33.4.1
報 老齢厚生年金 老齢厚生年金 - 男 S28.4.2~S30.4.1
- 女 S33.4.2~S35.4.1
報 老齢厚生年金 老齢厚生年金 - 男 S30.4.2~S32.4.1
- 女 S35.4.2~S37.4.1
報 老齢厚生年金 老齢厚生年金 - 男 S32.4.2~S34.4.1
- 女 S37.4.2~S39.4.1
報 老齢厚生年金 老齢厚生年金 - 男 S34.4.2~S36.4.1
- 女 S39.4.2~S41.4.1
報 老齢厚生年金 老齢厚生年金 - 男 S36.4.2以降
- 女 S41.4.2以降
老齢厚生年金 老齢厚生年金 - ③60歳以降も社会保険に継続加入すると給与の額によっては老齢厚生年金の全部又は一部が不支給になります。
- ※ただし、老齢基礎年金は全額支給されます。
<65歳未満の在職老齢年金のしくみ>
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総報酬月額相当額+基本月額≦28万円→支給停止されません
総報酬月額相当額+基本月額≻28万円→金額に応じて支給停止あり
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※総報酬月額相当額・・厚生年金の標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12
※基本月額・・老齢厚生年金額(加給年金額を除く)÷12