平成25年11月現在
「うちは、資産家ではないし、自宅と少しの預貯金だけだから相続争いにはならない。」と思っている方、要注意です。平成24年度の最高裁判所の司法統計によれば、遺産分割調停成立件数のうち、遺産総額が5,000万円以下のケースは76%、そのうち遺産総額1,000万円以下のケースが32%もあります。相続争いになるのは、何億も資産を持つ資産家だけではなく、一般家庭にも起こるということです。つまり、相続財産が少なくても相続対策が必要という事です。
では、次の家族の相続対策について流れを考えてみましょう。まずは、現状の家族構成、相続財産(負債も含む)を把握し、自分自身が考える相続内容をまとめます。
母は既に亡くなっており、
父は一人暮らし
長男は結婚し町内に在住
長女は結婚して県外に在住
自宅の土地と建物(評価額2,000万円)、現預金1,000万円
- <父が考える相続内容>
- 「私が亡くなった後の自宅の土地と建物は長男に相続させ、仏壇やお墓の面倒をみて欲しいと思っている。現預金は長男400万円、長女400万円を相続させ、これからの市の発展に貢献する為、自分の住んでいる市に200万円を寄付したい。子供にわざわざ話をしなくても、遺言書などなくても、子供達は分かってくれる。」
父は、何もしなくても、自分の思い描いている相続内容が実現すると思い込んでいますが、父は遺言書を作成していない為、法定相続人の間の遺産分割協議によって相続内容が決まることになります。
つまり、父の希望する相続内容を実現するかどうかは、法定相続人である子供次第ということになります。
では、父の希望する相続内容が実行される可能性があるかどうか、子供が考える相続内容を聞いてみましょう。
- <長男が考える相続内容>
- 「今まで両親の面倒を見てきたから当然、父の土地と建物は自分が相続するものだと思っている。現預金は、長男500万円、長女500万円が良いと思うが、父と相続の話をしたことはない。」
- <長女が考える相続内容>
- 「県外に住んでいるので、父の土地と建物の相続は難しいと思っている。その代わり、現預金は多く相続したいので、長男300万円、長女700万円が良いと思うが、父と相続について話をしたことはない。」
残念ながら、この家族は、それぞれ思い描いている相続内容が違いました。今のままでは、父の希望する相続内容は実現できそうにありません。更には、子供の希望する相続内容がそれぞれ違うため、長男、長女の間で相続争いになる可能性があります。
相続争いを避けるために、事前に相続財産と相続人の調査を行い、自分の思い描く相続内容を整理することが必要です。このケースの父は、子供に自分の考える相続内容や自分の思いを子供に伝えて、理解してもらうことが望ましいと思います。そして、父の希望する相続内容に子供が納得しない場合や話し合いが難しい場合は、家族を相続争いに巻き込まない為に、遺言書の作成をお勧めします。
「相続財産、相続人の調査」、「遺言書作成」、「相続手続き」等は、合同経営にご相談ください。