令和2年3月現在
2020年4月民法改正採用時の「身元保証契約」の見直しが必要です
債権法分野の民法改正が2020年4月1日から施行されます。労務関係には影響はほとんどありませんが、採用時に身元保証契約を従業員と交わしている会社はその必要性や目的を改めて見直す必要があります。
具体的には「個人保証人の保護強化」を目的に、「極度額」(賠償責任限度額)の定めのない個人の保証契約は無効とされることとなり、この改正により、2020年4月1日以降に入社する従業員との契約書には賠償責任の限度額を定めなければならないことになります。
身元保証契約とは?
会社が従業員と雇用契約を結ぶときに取り交わされることが多い契約書で、「従業員が入社後に、過失によって会社に損害を与えた場合に、会社に対して損害を賠償するということを本人に誓約させ、本人以外の身元保証人が連帯して賠償責任を負う」ことを保証するものです。
現行の身元保証契約書は、身元保証人が一体いくらの賠償を負うのかという具体的な金額が明記されていないことがほとんどです。
極度額(上限額)をいくらにすれば良いか?
極度額の定め方やその上限額については、法律による規制はありません。
極度額は、当事者の合意に委ねられていて、金額によって契約が無効になるということもありません。
万が一の場合の賠償額は様々な事情を踏まえて最終的には裁判所が決定しますが、会社としては契約時に極度額をどの程度にすれば良いか検討が必要となります。
極度額については、会社の事業内容や従業員の地位等を考慮して、会社ごとに目安を定めていくしかありませんが、従業員に支払われる給与額を上限額の目安(給与の●●カ月分など)とし、さらに「裁判所が決定する額」と記載しておくのも一つの方法でしょう。
現状は、身元保証契約が機能していないという会社も多いのではないでしょうか?
規則で定められているからという理由で身元保証契約を入社時に行い、それきり更新作業を行わず制度自体が形骸化している会社も多いと思います。
この民法改正を機会に金銭的保証が必要な業務かどうか、従業員ごとに身元保証契約内容を改めて見直してみてはいかがでしょうか?