核廃絶へ 時代は変わる (09.8.10)
「なぜ、あなたは、怒らないのですか?」
私は、思わず目の前の白いベットの上で座るおばあさんに口走った。そこは、熱い日差しの照る広島の市民病院の一室。
おばあさんは「私は被爆者です」と話し始め、被爆して以後の苦節29年間の体験を話した。その直後の私の一言。
35年たった今でも、あの未熟な私の一言を思い出す。真っ正面から初めて被爆体験を聞いた高校三年生の18歳のときだった。その頃は、相手の気持ちを考えることが出来なかった。でも、「我慢して生きているように見えた」ことは、私にはとても不思議だった。
今日、オバマ大統領の「核廃絶」という演説が注目されているが、当時は「核の傘」「核の抑止力」というのが当たり前のことだった。生きているうちに、アメリカ大統領の口から、この言葉を聞けるとは思っていなかった。
「時代は変わる」というのが、今年の8月6日と9日の実感だ。(林哲也)