今を生きる (12.2.10)
先日、瞬間記憶力に優れたチンパンジーの母子を紹介しているTV番組を観ました。その知能の高さには本当に驚かされました。しかしどんなに高い知能をもつチンパンジーでもヒトにはなれません。それはなぜか。チンパンジーとヒトとの違いとは何か。そのひとつは「想像力」だそうです。我々人間は、よりよき未来を想像(イメージ)し、そのためにさまざまな技術を開発し今日の文明社会を築きあげてきました。一方、チンパンジーにはその想像力が欠落していて、今目の前にある世界でのみ生きています。そのときそのときで生きて未来のために何かを考え行動するというようなことはしません。それがチンパンジーとヒトの大きな違いというわけです。
やっぱり人間の方が優れているという話しをしたいのではありません。そんなチンパンジーの生き方を少しうらやましく思いながら観ていました。人間は想像力によって将来に希望を抱くことができます。しかし反面、それがあるがゆえに、自分の置かれた状況から将来を悲観し、人生に絶望してしまったりすることもあります。日本では毎年3万人超が自殺します。想像力はたしかに人間のもつ優れた能力でありますが、ときにそれは自らを破滅に追いやるという悲劇をもたらします。
過去を悔んだり、将来を憂うのは人間だけです。自殺するチンパンジーはいません。将来のためにしっかりとした人生計画をもつことは大事です。しかしその夢見る未来から逆算して今(現在)を生きるのではなく、あれやこれや考え過ぎず、ただ「今を生きる」ということも大切なのではないかと気づかされました。その気さえあればチンパンジーからも学ぶことができます。
(松本 秀紀)