盗人だけが悪いのか? (11.7.21)
福島県内において5月までの3ヶ月間で、空巣や事務所荒らしといったいわゆる「侵入盗」が、昨年同期比4割増となっているそうです。 福島第一原発の事故に伴い計画的避難区域などに指定された地域において、急きょ避難を余儀なくされ、金品が残ったまま無人となった住宅や店舗・事務所が多数あり、それらが狙われたためとみられています。
ただ本当に憂慮すべきことは、そうした盗人の中に、この度の震災で窮地に追い込まれ、やむなく犯罪に手を染めてしまった人々がいるのではないかということです。職も家も他の財産もすべて失い、どうしたものかと途方に暮れているとき、ふと前を通りかかった倒れかけの民家の庭先に財布が落ちていたら・・・。そのような状況下に置かれたとき、その財布に手を伸ばすことなくその場から立ち去る絶対的自信が、正直わたしにはありません。
もうずいぶん前のことですが、20歳代の若い社員をたくさん雇用して、いわゆる現金商売を営むある経営者の方にこんな話をお聞きしたことがあります。「よく同業者のあいだで売上を盗られたという話しを聞くけど、まだまだ子どもの二十歳そこそこの子たちの目の前で、毎日、毎日、現金ちらつかせといて、盗るなっていうのもかわいそうな話や。だから盗れないシステムを作るのがわたしの責任やと思う。」という話を。この経営者の若い従業員を思いやる心に感動したことを今でも覚えています。先の侵入盗の記事を目にしたとき、ふとこのことを思い出しました。
詰まる所、同じだと思います。国のリーダーたちは、この震災があったがために、生来、善良な国民を盗人にしてはならないのです。政治の混迷のために、いつまでも政治的、経済的に混沌とした社会に国民を放置し続け、やむなく最後の一線を越えてしまう人をつくらないようにしなければなりません。一刻も早く未来への道筋をつけてあげなくてはならないのです。出迎え方が悪いのなんのと小言を言うような小っちゃな人間にできる仕事ではありません。
22日に参議院で成立する見込みであった東日本大震災の追加復旧策を盛り込んだ第2次補正予算案は、今日、首相の外国人違法献金問題で審議が紛糾し、成立が週明けの25日以降にずれ込むそうです。やれやれ・・・。頼みますよ、先生方・・・。
(松本 秀紀)