読んで救われなかった「告白」 (10.1.27)
「主婦作家の湊かなえ」との表現で、NHKの番組で登場していました。
流行に弱い性格ですので、早速、購入して一読。
社会性のあるセンセーショナルな話題が冒頭に展開され、その事件について各関係者の視点から話が展開されていくのですが、あまりにも寂しい展開の連続で、これでは「全ての人が闇の心だけしか持っていない。誰もが闇に入ろうとしている」ということを展開しているにすぎない話の連続。
そもそも、「なぜ人は、人をいじめるのか・・・」「なぜ、誤りを犯すのか」という問題自体に疑問も持たず、深めることなく、展開している点に読者としての心の救いが得られなかった。「救われない作品」との読後感に襲われてしまった。
必ず人間には「優しさ」や「愛情」というものがあって、こうした「闇」に支配されないように生きようとする部分があるはずです。この作品には、そうした視点が全く欠落しているだけではなくて、作者の頭の中にはおそらく懐疑的視点が一貫しているようです。文字どおり「救いを感じない」作品の読後感となります。
また、「本屋大賞」などの受賞や映画化されることに疑問を感じました。「売れそうな話の展開だから大賞にした」というところでしょうか。
読後感想では「オススメ文章」が多いのですが、私としては「読んで損をした」という感想になってしまいました。若干、否定的意見ですが、話題作ではありますので関心のある方はご一読を。(林哲也)