袴田さんの48年に思う (14.3.28)
事件から48年。殺人事件の犯人とされ、死刑の判決を受けた袴田巌さんが、再審開始決定を受け、48年ぶりに釈放された。
袴田さんの48年、私のこれまでの人生よりもまだ長い間、自由を拘束され、いつ死刑が執行されるのかという恐怖の48年間だったのである。想像しきれない。無罪だった場合、国はどう責任をとるのだろうか。48年の人生を取り返すことなどとてもできないのに。
人生を狂わされたのは袴田さんだけではない。死刑の判決文を書いた地裁の裁判官は、審理が進むほど「こんな証拠で死刑判決はむちゃだ」と思い、無罪の判決文を書いていたが、先輩裁判官二人から、死刑判決分を書くことを命じられたそうだ。「心にもない判決文を書いた」と良心の呵責に耐えきれず、判決の半年後に裁判官を退官、その後弁護士になるが、袴田さんの「私はやっていません」というまなざしが忘れられず、弁護士も辞めてしまう。自殺を考えたこともあるという。
袴田さんや元裁判官、その家族ら多くの人の人生を狂わせた事件だが、その重要な証拠すらねつ造されていた疑いがあると今回静岡地裁は指摘した。
「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則がある。すべての被告人は無罪と推定され、検察官が犯罪を証明しない限り有罪とされないというルールだ。証拠をねつ造するなどということは決してあってはならない。
(鈴木)